Ade
別れの言葉だ。ブラームスには「Ade」という作品がある。op85-4だ。
シューベルトのテキストを注意深く観察すると印象的な用例がある。
- Die bose Farbe(いやな色)D795-17
- Abschied(別れ)D957-7
どちらの「Ade」も「A」がアウフタクトに出ていて拍頭に「de」が来るというフレージング。
「いやな色」は歌曲集「美しき水車小屋の娘」全20曲のチクルスの17番目。強力なライバルの出現に遭って自ら身を引く主人公のセリフに出て来る。4節に1回と6節に2回。よくあることとは言えやはり悲痛だ。
「別れ」は歌曲集「白鳥の歌」の7曲目。レルシュターブ供給の1群のラスト。全6節のテキストだが、問題の台詞「Ade」は各節4回ずつ計24回も現れる。その割には曲想は暗くない。徒弟制度が根底にある。「いやな色」と違って恋人との別れが主眼ではない。伴奏の勢いもあってむしろ希望さえ感じられる。
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