イェンナーの証言
グスタフ・イエンナー(1865-1920)は恩師マルクセンに頼まれてという事情もあってか事実上唯一の作曲の弟子だ。1895年に1年間ウィーンに滞在してブラームスの教えを受けた。その回想録は音楽之社刊行の「ブラームス回想録集3」に訳出されている。その226ページに「ブラームスと歌曲」と題された章があり、「有節歌曲」という副題がついている。
そこでは作曲の教材として「有節歌曲」が有効だというブラームスの持論が証言されている。シューベルトの作品群のうちとりわけ有節歌曲を好んだというブラームスの嗜好と一致する。テキストを見つけたら、それが有節歌曲として成立するかをまず確認しなさいという指導を証言する。ここでのしくじりは必ず厳しく叱責されたという。有節歌曲になるかならないかの判断にシューベルトの歌曲がよい手本になるという言葉を噛みしめている。シューベルトの歌曲全てを綿密に研究してみろともいわれている。「シューベルトの歌曲ならばどんなものでも何か学べるよ」など、もうシューベルトネタのてんこ盛りである。有節歌曲をベースにテキストの内容に即した少々の気の利いた逸脱まで含めて推奨している。
イエンナーの見解によればシューベルト最高の有節歌曲は「恋人のそばに」D162だという。
« シューベルトとドヴォルザーク | トップページ | マンディの証言 »
コメント