秋の夕暮
昨日没後780年 のメモリアルデーを迎えた定家様の代表作は下記。
見渡せば花も紅葉も無かりけり浦の苫屋の秋の夕暮
第三句に否定を置き、結句に「秋の夕暮」を配する鉄壁の定家節が炸裂している。新古今時代にはこの「秋の夕暮」がもてはやされた。「秋の夕暮」は枕草子が指摘している通り、「もの思ふ秋」の象徴的題材だ。「三夕」に象徴される新古今の時代はそこがいっそう突き詰められていた。
一年の終幕に向かう秋と一日の終幕に向かう「夕暮」の交点としての「秋の夕暮」のイメージに、人生の秋としての「老い」までも重ねられてゆく。「物思ひ」からはひそかに恋のテイストも漂う。
さてシューベルトはいかがか。
D405にズバリの「秋の夕べ」がある。オリジナルは「Der Herbstabend」という。ザリス・ゼーヴィスのテキスト。物や思へとばかりの淡々とした短調の曲想。がしかし、一つ前のD404が同一作者の「秋の夜」になっていて、「秋の夕暮」が特段の位置にはない感じがする。
そもそもタイトルに現れる曲の数では秋よりも春が優勢なシューベルトさんであった。
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