五月の夜マニア
ドイチュ番号で言うなら「月に寄せて」D193の次に「五月の夜」D194がある。オリジナルは「DieMainacht」という。ヘルティ のこの同じテキストにブラームスが付曲している。op43-2だ。「ブラームス歌曲名曲選」の類には高い確率で採用されるメジャーな作品。タイトルにこそ現れないが1行目に「銀色の月」が現れ事実上の月の描写だとわかる。
シューベルトは短調。4節の原作に忠実な有節歌曲に仕上げている。ブラームスが後日同じテキストに曲を付けるなど、シューベルトは知ったことではないが、追随するブラームスの脳裏にはシューベルトの先行作がとどまり続けていたはずだ。ブラームスが長調を採用したことはむしろ表面的だ。全4節のうち3節目を描写の肝と解釈し、こともあろうか第2節目を完全に省略。第1節と第4節が第3節を挟む形の三部形式に仕上げた。変ホ長調に挟まれたロ長調という調性のプランにこそインスピレーションを感じる。フラット3個を起点に次々と臨時記号のフラットが付与され、崩落の頂点でクルリとシャープ5個にすりかわる。
追う側の責任。王子の面目躍如。
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