ヴィトマンの証言
Josef Viktor Widmann(1842-1911)は、スイスの作家、評論家。父は牧師だったが本人の記憶によればかなりな音楽一家に生まれたとある。ホームコンサートの演目にシューベルトがあったという。母はベートーヴェンと交友があり、父はシューベルトと交友があったという羨ましい境遇。で、このヴィトマン本人はブラームスと交流した。結婚を機にスイス・ヴィンタートゥールに住みそこでブラームスとの交友が始まり、その様子が出版されている。ブラームスがいくつかの夏をスイス・トゥーンで過ごしたのはヴィトマンの存在が大きい。避暑の間以外の交友は主に文通だった。
同時代の文学者に対するブラームスの評価が話題になった。ヴィトマンはブラームスが評価する作家の顔ぶれがどうにも保守的だという。しかしこれは食わず嫌いではなく、作品に触れた上でのブラームスなりの評価であったと補足する。同時に世の中の一般的な傾向として、作曲家は同時代の作家には得てして冷淡だとする。文脈からそれが歌曲へのテキストの供給状況を含むと解してよさそうだ。続いてさらに興味深い指摘が続く。作家の方も、同時代の音楽には冷淡だったからお互い様だというのだ。その例として「魔王」に触れたときのゲーテの冷淡な態度を挙げている。
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