子守歌のアイス
ブラームスの子守歌には譲るもののシューベルトさんの子守歌も素晴らしい。D867にも子守歌があるけれど断わりなく「シューベルトの子守歌」と言ったらD498の方だ。フィッシャーディースカウ先生はグラムフォンの全集収録においてこの曲を控除しておられる。おそらく女性によって歌われるべきというお考えだろう。その一方で「ブラームスの子守歌」は録音されているので何か違いを実感されていたのかとも思う。
そりゃあもう端正な造り。2小節単位でAーA-B-Aという王道の枠組み。こんなもん19歳で作曲するとは藤井聡太三冠もびっくりだ。思いつく奴にはかなわない感じ。
とりわけ、上記の枠組みで言うとBの部分の末尾でA音に付与される臨時記号のシャープは魔法だ。フィッシャーディースカウ先生のご著書にあやかって譜例を出来るだけ使わぬようにしてきたが、本日ばかりはこらえきらない。
赤枠を施した音だ。A音からD音に沈みこむメロディーラインと入れ替わるようにスルリと浮上するかのようだ。次小節のA部分冒頭に存在する「H音」を強くツヨーク求める音。仮にこの変異がなくて「D-Fis-A」のままだったとしても属和音だから、次小節冒頭のト長調に回帰するには十分なのだが、変化されてみると必然度が断然上がる。和声学的に何という効果なのか知らんが、そんな後付けの理屈はかえって邪魔かもしれない。
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