さすらい人
歌曲集「冬の旅」が幾分観念的であると書いたが、「さすらい人」はまた趣が違う。オリジナルは「Wanderer」という。シューベルト歌曲のリストには以下の通り「さすらい人」が現れる。
- さすらい人の夜の歌 D224 ゲーテ
- さすらい人 D493 リューベック
- さすらい人 D649 シュレーゲル
- さすらい人の夜の歌 D768 ゲーテ
- さすらい人が月に寄せて D870 ザイドル
この他、歌曲集「美しき水車小屋の娘」の第1曲は「さすらい」になっている。D493は名高いピアノ曲に引用されている。
注目すべきはゲーテで、上記1と4同タイトルながら別テキストである。ゲーテは自分を「さすらい人」と称していたらしい。自らの芸術の原点、心ありようとしての「旅」と捉えるなら、西行や芭蕉に通ずるものがありはせぬか。和歌に通ずる観念の旅にふさわしい。
ブラームスはただ一度「さすらい人」op106-5がある。テキストはラインホルト。「冬の旅」然とした鬱屈なヘ短調だ。
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