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2022年1月27日 (木)

MOW

「Memory of World」の略。ユネスコ記憶遺産のことだ。歴史的に意義のある文書を、最新のデジタル技術を駆使して保存して行こうという試みで1995年にスタートした。世界遺産に比べると知名度は低いかもしれない。

登録数最多はドイツの13点で、オーストリアが12点でそれに続くのだが、その12点の中に、ウィーン楽友協会が所蔵するブラームスコレクションなる一群があった。2005年に登録されている。

1897年ブラームスが没したとき、その遺産遺品は遺言により、ほぼウィーン楽友協会に寄贈された。1812年の設立以来「音楽に関するあらゆる史料資料を網羅する」ことを基本方針としてきた同協会はこれを拝受し保存に努めた。歴代の資料館長が綿々と受け継いできた伝統だ。館長の中には、フェルディナンド・ポールやオイゼビウス・マンディチェフスキなど、ブラームス本人と親交の深かった人物が見られる。特にマンデュチェフスキーは、ブラームスの子分のような関係であり、その機知とユーモアが愛されていた上に、ブラームス没のとき、資料館長の座にあった。

マンディチェフスキーからすれば、師匠の遺品を収蔵品に加えることに他ならない。ブラームス自身の直筆譜面、ブラームスが収集した他の作曲家の直筆譜が、同コレクションの白眉となっているほか、ブラームスが収集した出版譜や書籍も膨大な量が残されている。ブラームス宛に送られた著名人からの手紙もほぼ無傷でもたらされた。

これだけでも愛好家にとっては垂涎物だが続きがある。この寄贈を機会に、マンディチェフスキーは、さらにブラームス関連の資料を充実させようと決意した。散逸した資料の買戻しはもちろん、生前ブラームスと親交のあった知人友人からゆかりの品物の寄贈を受けた。

単に音楽的な価値であることに留まらず、ブラームスの生きた時代の社会世相を忠実に反映した第一級史料という価値をユネスコによって正式に認められたということだ。まずはブラームス本人の旺盛な好奇心と、それに立脚する収集癖がベースになり、寄贈を受けた楽友協会の収集方針に一貫性客観性が宿っていたことが大きい。

 

 

 

 

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