旋回の向き
ウィーンにおけるワルツの大ブームの中、長くウィーンに住んだブラームスがワルツを踊ったのかどうかについて調べているのだが、めぼしい情報が見つからない。一方で興味深い外道情報が目に留まった。
密着した男女が目にも留まらぬ速さで回転するのがワルツの醍醐味。男性が女性の腰に手を回し、女性は男性にしっかりしがみついていなければ遠心力に耐えられない。だからいやでも密着する。これがけしからんということで、しばしば禁止令が出されている。その禁止令の周辺を調べるとしばしば旋回の向きが話題になる。「右旋回ワルツ」と「左旋回ワルツ」だ。これが直ちに「時計回り」と「反時計回り」を意味するかどうかは調査中だが、ワルツを踊るときの姿勢は左右対称ではない。このことが旋回の向きによる違いを生み出していると見て間違いあるまい。
左旋回は男性がより強く女性を引き寄せねばならず、右旋回に比べて密着度が増すとされている。当局は「右旋回ワルツ」だけを許可する内容の告示をしばしば出している。つまり密着度を抑えるという意味だ。
高い密着度はイコール公序良俗に反するという認識の現れだ。密着度はハイテンポと左回りで助長される。速いテンポのワルツを左回りで踊るのが、高密着の秘訣といえそうだ。ワルツのレパートリーを見ても「左旋回のための」とか「右旋回用の」というワルツにはお目にかからないから、どちらに旋回するかは踊り手たちの自由なのだと思う。「ブラームスのワルツ」で名高い15番イ長調のワルツはテンポが緩すぎて、一部の紳士淑女には歓迎されないと見た。14番あたりがおすすめかもしれない。
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