レンタルピアノ
一流のアスリートに対し、メーカーが用具を無償提供するケースがある。一流選手が使用しているということ自体が、巨大な広告と同じだから、メーカー側に十分なメリットがある。
ウィーン進出以降、ブラームスは瞬く間に楽壇における地位を上げていった。彼が演奏会で弾くピアノには注目も集まろう。メーカーはそこに目を付ける。シュトライヒャーというウィーンのメーカーが、カールスガッセの自宅用にとピアノを1台貸与する。
1872年のことだ。カールスガッセへの転居と同時に貸与されたと解されよう。そしてそれは、ウィーン楽友協会の芸術監督に就任した時期とも一致するのだ。
そのピアノはブラームスが没するまでその部屋にあった。つまり終身貸与である。これが有償だったか無償だったか定かではないが、心証としては「そりゃ無償に決まってンだろ」という感じである。
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