絶対音楽の裏をかく
ブラームスは「交響曲」「協奏曲」「ピアノソナタ」「弦楽四重奏曲」「ワルツ」など、既に世間での位置づけが決まっているタイトルを、作品の表紙に掲げ続けた。音楽史上、ブラームスが開祖となったジャンルは無い。誰かが既に名付け、ある程度世間に受け入れられたジャンルの名前を付けたということだ。
こうしたタイトルを掲げることで、演奏者や聴衆の側に生じる先入観の裏をかくことが、ブラームスの狙いだったのではと感じることがある。
- 交響曲各楽章の調性配置
- とりわけ第3楽章の異質な調性と舞曲の放棄
- ヴァイオリン協奏曲における4分の3拍子の第1楽章
- ピアノ協奏曲における独奏ピアノとオケのからみ。
- 弦楽四重奏第3番の「アレグロ不在」
- ワルツの標題を掲げながら実質はレントラー
上記はみな古来の慣習と違う選択をした結果だ。それに気付く気付かぬには関知しないブラームスだが、気付けばその周辺から新たな味わいが広がる。
保守派の重鎮、絶対音楽の旗手という評価が高まるほど、このようなひねりが効果的だったと考える。
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