森を歩く
ブラームスは「どうしたらピアノが上達しますか」という問いに、半ば真顔で「森を歩くことだよ」と答えたことがある。早起きして森を散歩しないのは人生の損失だと言わんばかりだ。
ウィーンに居るのは寒い季節だが、夏の避暑地滞在中は本当にこの通りの規則正しい生活をしていた。
健康に良いことはもちろんだが、ブラームス本人が芸術上のメリットと認識していたことは確実だ。朝の森で遭遇するさまざまな光景が、創作の肥やしになっていたことは動かし難い。
さて、私は普通のサラリーマンだ。かつては郊外の我が家と都心の職場の往復に明け暮れていただけだから、森には縁がない。今は在宅勤務の定着によって消滅した通勤時間の有効活用ということで夕方散歩にあてているが、森が調達できない。
それでもよく記事のネタを思いつく。あるいは書店、CDショップ、楽譜屋の徘徊も、記事のひねり出しに効果がある。ネタに困ったら書店、音楽書ばかりではなく歴史書や地図・観光ガイドの売り場も含めて散歩することにしている。知識の森の散歩である。
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