取引銀行
ジムロックに加えもう一人、フェリンガーがブラームスの預金口座を管理していたと推定した。しからばそのブラームスの口座はどのような銀行だったのだろう。
なかなか資料が発見できないが、思わぬ所に手がかりを見つけた。音楽之友社刊行、日本ブラームス協会編「ブラームスの実像」という本の最終章に、盛大な葬儀の様子が書かれている。会葬者の名前が列挙される中に以下のような件を見つけた。
銀行家リッター・フォン・ドゥチュカ
会葬者および花輪の送り主は本当に多岐にわたっており個人団体合計でざっと100もの名前が記されているが、銀行家と明言されているのは、この人だけだ。さすがに音楽関係の名前が多いから、銀行家という肩書きは異彩を放っている。
銀行家が自らの肩書きを隠さずに葬儀に参列するというのはどういう状況が考えられるだろう。ブラームスが本人名義の口座を開設している銀行の首脳部と考えては行き過ぎだろうか。ましてブラームスは個人の顧客とはいえ相当な預金額だったに決まっている。世間での知名度を考えれば、銀行の頭取が葬儀に出席しても不思議はない。
それがジムロック社あるいはジーメンス社の取引銀行である可能性さえ想像してしまう。
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