敵の敵は味方か
エドゥワルド・ハンスリックは19世紀後半を代表する音楽評論家。楽壇を2分する論争の中、ブラームスを擁護する一方、激しくワーグナー派を攻撃した。
だからブラームスとは蜜月だったかというとそこはまた微妙だ。
16のワルツop39は、ハンスリックに捧げられている。作品が献呈されるくらいだから親しい間柄なのだが、ハンスリックはともかくブラームスは本音と建て前を使い分けていた形跡がある。交響曲や室内楽の大作を献呈していないのも皮肉な意図を感じてしまう。
ブラームスが評論家ハンスリックの「飯のタネ」であったことは想像に難くない。反ワーグナーの論陣を張る以上、対抗勢力の首領ブラームスと親しい間柄であることは、有形無形のメリットがあったに違いない。
実はブラームスは、ワーグナーとの交流の事実をハンスリックには伏せていた。さらにはハンスリックを「ワーグナー作品を論評するには耳も心も十分でない」と評していたと、一部の知人が証言する。ドヴォルザークの新世界交響曲の評価も食い違っていた。
ハンスリックよりもブラームスが一枚も二枚も役者が上と感じる。
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