マンチェスターソナタ
ヴィヴァルディの室内楽の中で異彩を放つ12曲のソナタ集だ。もともとヴィヴァルディがローマのオットボーニ枢機卿に献じたものが、卿の没後人手に渡り転々とした挙句に、マンチェスターの図書館の収蔵品であるところを、別作曲家目的での調査で偶然に発見されたからこの名がある。
- ハ長調RV3
- ニ短調RV12
- ト短調RV757
- ニ短調RV755
- 変ロ長調RV759
- ト短調RV758
- ハ短調RV6
- ト長調RV22
- ホ短調RV17a
- ト短調RV760
- 変ホ長調RV756
- ハ長調RV754
1974年「RV」が冠される「リオム番号」が考案されたとき以降に発見された場合、750番代以降の番号が付与される。上記の赤文字部分だ。実際の発見はリオム目録考案の前年だったが収載が間に合わずということだ。12曲中新発見が7曲というだけでマニアが狂喜するに足る。加えて9番ホ短調は既知のRV17の異稿だったというおまけつきだ。
内容はいわゆる室内ソナタで、決まり通り舞曲が混入するが、ドイツ風の「アレマンダ」「コレンテ」「サラバンド」「ジーク」の配列には微塵も顧慮していない。舞曲のタイトルさえなく発想記号むき出しの楽章も混じる一方、前奏曲プレルーディオも一部混じるという奔放な代物。もはや、中庸なテンポの4拍子が、前半後半でそれぞれ繰り返しさえ伴っていれば、内容に関係なく「アレマンダ」と称するし、早めの3拍子がこれまた前半後半でそれぞれリピートなら、舞踏適性は顧慮されずに「コレンテ」を名乗るありさまで、事情は「ジーク」や「ガヴォット」「サラバンド」とて同様だ。
舞曲の集合体としての室内ソナタの体裁はもはや風前の灯なのだが、ヴァイオリンと通奏低音のアンサンブルとしては極上とだけ申し添える。
« ドイツ側の実態 | トップページ | イタリアの実態 »
コメント