ソナタとパルティータ
チェロ組曲とともにバッハ無伴奏作品の双璧を形成する無伴奏ヴァイオリン作品はソナタとパルティータ各々3曲から構成される。このうちソナタは言わゆる「教会ソナタ」で舞曲を含まない一方、パルティータは舞曲の集合体だ。記事「Hortus musicus」で、ラインケンの室内楽の代表作に言及した中で、その楽章構成を下記の通り指し示した。
- ソナタ(序奏→フーガ→アンダンテ→フィナーレ)
- アルマンド
- コレンテ
- サラバンド
- ジーク
第2楽章以下がフローベルガーの定義を満たしていると書いた。
この第一楽章と残り4つの楽章が分割されたのが、ソナタとパルティータだということだ。古来両者は一体だったのだが、やがてソナタ部分と舞曲部分に分離独立したということだ。バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータは分離の過渡期がそのまま保存された化石のようだ。
ソナタ、パルティータ各3曲で、調性の不一致に目をつむればソナタとパルティータ各1曲一組とみなしうる。前半部分は後継の舞曲に対する序奏が起源だから舞曲を含まぬのは当然だ。ここに教会ソナタの名称が奉られたものと推察される。序奏ソナタに離脱された後半分は舞曲の集合体となり、やがては「室内ソナタ」と称されるに至る。
最大の疑問は、分離の前半部分、つまり舞曲を含まぬ方に「教会ソナタ」と命名し、後半部分、つまり舞曲の集合体側が「室内ソナタ」になったのかだ。
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