組曲イ短調
1855年9月12日だから、クララの誕生日の一日前だ。この日のクララの日記に「ブラームスがイ短調の完全な組曲を突然見せてくれた」という記述がある。その断片は下記の通り今に伝えられている。
- WoO3 イ短調ガヴォット
- WoO4 イ短調ジーク
- WoO5 イ短調サラバンド
マッコークルの「ブラームス作品目録」には「イ短調アリア」「イ短調プレリュード」が失われた作品扱いになっている。この5曲で構成された組曲イ短調をクララは誕プレとして受け取ったことは確実だ。
「完全な組曲」とクララが証言しているのは、組曲が古典舞曲の集合体であることを踏まえていると思われる。舞曲配置の順番を以下の通りと推測する。
- プレリュード
- サラバンド
- ガヴォット
- アリア
- ジーク
プレリュード先頭は疑問の余地はない。同様にジークが結尾に据えられたのも確実だ。ガヴォットは挿入舞曲だとするならサラバンドとジークの間がふさわしい。エアの位置は悩ましい。先頭と末尾以外どこでもあり得る。語感に照らしてエアのテンポが急速でないとすると、同じ緩めのテンポであるサラバンドの前後には据えにくいかと考えてひとまず4番目とした。
大事なことは音楽の素養が豊かなクララがこの顔ぶれで「完全な舞曲」と表現したことだ。フローベルガーの定義から「アルマンド」が脱落しているにもかかわらずだ。同定義を満たさぬ組曲がバッハでさえ全体の3分の1存在することを考えれば、フローベルガーの定義を満たさぬことをもって「不完全」とはみなさないということだろう。
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