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2022年6月10日 (金)

自由の中の不文律

記事「オルガン自由曲の標題」でバッハのオルガン自由曲を構成する標題について整理しておいた。

  1. 前奏曲とフーガ 18曲 「Praeludium und Fuga」BWV531から552まで。
  2. トリオソナタ 6曲 BWV525から530まで。両手と足でトリオという斬新さ。
  3. コンチェルト 5曲 BWV592から596まで。他者作品の編曲。「無伴奏オルガン協奏曲」
  4. トッカータとフーガ 5曲 BWV538、543、564、565、566。
  5. トリオ 4曲 BWV583から586。
  6. フーガ 4曲 BWV574、575、578、579。BWV578は「小フーガト短調」である。
  7. 幻想曲とフーガ 3曲 BWV537、542、582。
  8. 前奏曲 3曲 BWV568~570。
  9. 幻想曲 2曲 BWV572と573。
  10. アリア 1曲 BWV587
  11. カンツォーナ 1曲 BWV588
  12. パッサカリアとフーガ 1曲 BWV582
  13. パストラーレ 1曲 BWV590

コラールに準拠しないという一点をもって「自由曲」とくくられてはいるのだが、実は完全な自由ではないと感じる。「舞曲」がない。「アルマンド」「コレンテ」「サラバンド」「ジーク」「シャコンヌ」「ブーレ」など、バロック時代を特徴づける舞曲が全く出現しない。

わずかに1曲存在する「パッサリア」を舞曲と分類する人もいる。バッハが「パッサカリア」を舞曲と考えていなかった証拠かと妄想も膨らむ。

チェンバロやヴァイオリンによる「ソナタ」には「教会ソナタ」と「室内ソナタ」があって、それらは「舞曲の有無」により分類されていた。「教会ソナタ」には舞曲を含まぬと。「オルガン自由曲」が真に自由なら舞曲を含んでもよさそうなものだ。「自由」とはいえ、やはり「不文律」があるのだ。

持ち運びの難易度から見て、オルガンで弾かれることイコール教会で弾かれることだ。だから、教会ソナタに舞曲の混入が許されぬことと符合する。オルガン作品に舞曲を忍び込ませることはタブーなのだ。

ここでも舞曲を拒絶する教会という構図が示されている。

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