お盆のファンタジー48
シューベルトネタが全然途切れない2人の間に割って入りながら「ディースカウ先生にプレゼントがあります」と私が「ブラームスの辞書」を差し出す。
ディースカウ先生は「ほえ」と首を傾げたままフリーズ。ブラームス先生が補足説明に入る。「わしの全作品に現れる音楽用語を全部抜き出してアルファベット順に羅列して、使用箇所を添えた代物じゃ」「用例に加えてコメントもある」とどこで聞いたのかやけに詳しい。
今度は私がたたみかける。「先生のご著書シューベルトの歌曲をたどっての中に興味深い個所をみかけました」「ディースカウ先生はMassig
をmoderatoと断言してらっしゃいます」「Etwas~、ziemlich~、nicht zu ~をさして正解テンポにたどり着くのが難しいともおっしゃっています 」「私もその本の中でそういう解釈をしています」「先生はシューベルトから、私はブラームス先生の作品を分析する中から同じ結論に達しているのがうれしくて」と。「もしかして気が合うのではないかと思ったもので」と悪乗り。
あきれ顔のまま我に返ってパラパラとめくっている。「うーん」「ふー」「ほー」「えっと」としか言わない。
「これをくれるのか」とやっと絞り出す。
「もちろん」です。「その代わり先生がシューベルトの辞書を書いたら1冊ください」
一同爆笑となったが、ディースカウ先生の目は笑っていなかった。
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