個体識別の限界
鳴っている音楽作品の題名がわからないと落ち着かない性格だ。ブラームスはほぼわかる。これは、ジャンル名、調性、作品番号の使いまわしで作品の特定が容易なこともこれに貢献している。ジャンル名と調性だけでほぼ十分で、作品番号は補助的でいい。「ハ短調交響曲」とだけいえば「交響曲第1番ハ短調op68」とわかるし、「ニ長調コンチェルトと言えば「ヴァイオリン協奏曲ニ長調op77」とわかる。コンチェルトがニ長調なのは「ヴァイオリン協奏曲」だけだからだ。
ところが、ヴィヴァルディはそうもいかない。ニ長調ヴァイオリン協奏曲と言っても10曲以上あるから、個体の特定には程遠い。バッハの場合はジャンルごとの総数がさほど多くないので「イ短調ヴァイオリン協奏曲」という類の言い回しで事足りる。
さらにだ。ブラームスの場合は楽章冒頭の発想記号が多彩で、事実上の表題として機能する面もあるのに対して、ヴァイヴァルディは「Allegro」「Largo」を筆頭に同じ発想記号を背負った楽章が山ほどある。
結局はリオムさん創設のRV番号に頼らざるを得ないが、ジャンル別調性別に配列して附番しているから「ニ長調ヴァイオリン協奏曲」はみな似たり寄ったりの番号になる。聴きこんで覚えるしか方法がない。楽譜を見ながら聴ければイメージ構築の手助けにはなるのだが、「調和の霊感」と「四季」以外の楽譜は入手しにくいのが現実だ。
頼りは耳だけという厳しさ。
救いは作品の素晴らしさだ。
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