カンタービレの位置
書籍「ブラームスの辞書」の収集対象たるブラームスは、楽譜上に記する音楽用語について、とても雄弁である。だからこそ辞書にしようと思い立つのだ。
ひるがえってバッハやヴィヴァルディなどバロック音楽では事情が大きく違う。楽譜上に記される音楽用語面では寡黙である。「Allegro」など楽曲冒頭のテンポ指示や発想用語でさえ、しばしば省略されるほどだ。
テンポやダイナミクスはそれでもまだ目につく方だ。「dolce」「espressivo」「marcato」などの表情付与の用語は大変に珍しい。ヴィヴァルディの出世作「調和の霊感」においてわずかな例外を形成するのが「cantabile」である。「歌うように」と解されて疑われることはない。「調和の霊感」を構成する12曲の協奏曲の中、「cantabile」と書かれている場所を以下に列挙する。
- 5番第2楽章冒頭 独奏ヴァイオリン
- 6番第2楽章冒頭 独奏ヴァイオリン
- 8番第2楽章5小節目 独奏ヴァイオリン①
- 8番第2楽章9小節目 独奏ヴァイオリン②
- 8番第3楽章87小節目 独奏ヴァイオリン①
- 12番第2楽章7小節目 独奏ヴァイオリン
以上だ。調和の霊感全12曲を通じてたったの6箇所だ。「cantabile」と書く書かないの基準がさっぱりわからない。書くからにはとっておきの場所なのだと思う。ブラームスを含むロマン派の作曲家ほど楽譜上の用語の頻度や種類が多くないから、書かれると相当気になる。
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