千々の春
千々の春万の秋に永らへて花と月とを君ぞ見るべき SWV353
一つ前のSWV352で冬の部が終わった。ここから「賀」の部に入る。「賀」とは何かを寿ぐ歌ではあるけれど、初句にいきなり「春」を配置して四季の巡りをトレースすることも忘れない。泰然とした詠みっぷりだが同時に綿密な計算も透けて見える。「千万」「春秋」が二句にまたがって配置される漢詩風の立ち上がりに続いて、「花と月」という春秋の象徴がその順で整列する。君はおそらく後鳥羽院をさす。「君」が「ぞ」によって強調されて、天皇の長寿を祈念する内容で間違いあるまい。言葉にして歌にして献上することでその実現を祈るということだ。
こういうのをかっこいいと思うようになった。歳だろうか。
京極為兼はこれを「玉葉和歌集」賀の部に採録した。
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