行く年を惜しむ
はかなくて今宵明けなば行く年の思ひ出も無き春にやあはなむ SWV352
冬の部のラストで締める歌。これにて春夏秋冬の1年を締めくくる。夜が明けたら今年一年の思い出も一気にリセットされるのだろうとばかりに、なんだかやるせない感じが溢れている。基本姿勢として「行くもの去るものは惜しむ」ということ。対象は人、花、年という具合になんでもありだ。日本人の美意識にそれがあるから季節の節目節目でその都度感慨に浸る。四季では飽き足らなくて二十四節季とするだけで、歌のキッカケは6倍増になるという寸法だ。冬の歌なのに結句に春を偲ばせることで一回りを仄めかすこともわすれない実朝である。
コメント