あやなの花
行きて見むと思ひしほどに散りにけりのあやなの花や風立たぬ間に SWV083
「あやな」は形容詞「あやなし」の語幹などと品詞分解に走っても味気ない。「あやなし」が形容詞なら「あやなき花」とすればよさそうなものを「あやなの花」とした感覚を味わいたいと思う。「見に行ってやろうと思っているうちに風も吹かぬうちに散ってしまった理不尽な花よ」くらいの意味で、「風で散ってしまったのならともかく」というニュアンスもほんのり感じ取るべきか。語彙も表現も古歌に前例があるにはあるのだが、それらに悠然と寄り添ってなお際立つ実朝節である。
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