憂き言の葉
世に経れば憂き言の葉の数ごとに絶えず涙の露ぞ置きける SWV602
雑歌の部に置かれる一連の老いを嘆く歌も大詰めだ。言の葉に置く露という着想が細かい。本来は植物の葉に置くところ「葉」を軸足にくるりと裏返して見せる。この世に長く身を置いていると、つらいことを嘆く言葉が涙を誘うというもの。丁寧に説明しようとすればいたずらに字数を費やすところ、和歌に仕立てることでキリリと引き締まる。つらいことの描写には違いあるまいが、引き締まった表現は爽快ですらある。
それはそうだ。彼はこのときまだ22歳。
定家が新勅撰和歌集に採用している。
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