千入の真振
くれなゐの千入のまふり山の端に日の入るときの空にぞありける SWV633
下の句で夕日とわかる。現代なら写メってインスタ映えは確実なところ、実朝は夕焼けの絶景をなんとか歌で伝えようと試みる。それが上の句に結実する。「千入」は「ちしお」と読む。実際に千回ではなく「たくさん」の意味だ。染め汁に何度もつけて色を濃くすることを「まふり」という。「くれなゐ」はベニバナの染料。これをうーんと濃縮したような赤だと彼は言いたいのだ。当時の人はスマホの知識はゼロだが、染色の知識は広くて深い。こう詠むことで伝わると確信している実朝は、結句に字余りを配してどっしりと踏みしめる。
これをスルーするか。勅撰和歌集の撰者たちよ。
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