八大竜王
時により過ぐれば民の嘆きなり八大竜王雨止め給へ SWV619
建暦元年七月の大雨洪水に接した実朝が水神に直談判を試みた歌。和歌の世界で地名以外の四文字熟語はどちらかというと異例。大和言葉っぽくないからだ。そんなことはお構いなしに「なんとかせい」と八大竜王にすごんで見せる。異例の使いまわしがかえって気迫と説得力を増幅させているように見える。線状降水帯に対抗するにはこのくらいの気迫は最低取り揃えておきたい。案の定、都の手練れたちからはスルーされていて勅撰和歌集にはついぞ採用されなかった。実朝補正のかかった私の脳味噌には後鳥羽院の「我こそは新島守よ隠岐の海の荒き波風心して吹け」に匹敵する。
ちなみに伝足利義政編の「金槐和歌集」柳営亜槐本では本作が大トリになっている。大賛成だ。
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