空や海
空や海うみやそらともえぞ分かぬ霞も波も立ち満ちにつつ SWV640
詞書に「あさぼらけ」とある。空には霞、海には波が満ちていて区別ができないと驚いている。「空や海」「うみやそら」という反復が錯綜ぶりをうかがわせ、第三句「えぞ分かぬ」に収束する。「え~ぬ」は不可能をあらわすと古典の時間に習ったけれど、はまりまくる実例を示された気がする。「え」のあとに「ぞ」が来ているので不可能がいっそう強調されている。「霞」「波」という指摘が心地よい。どちらも「立つ」ものだという辻褄。
京都にいながら定型にそって詠む歌人たちとは明らかに一線を画す。実朝は海を知っている。案の定勅撰和歌集には採られない。
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