破砕裂散
大海の磯もとどろに寄する波破れて砕けて裂けて散るかも SWV641
耳を澄ませてほしい。第二句の「とどろに」で音がする。続く第三句以降19文字の中に動詞が5つもある。そしてその5つの動詞全てが「波」を主語に仰ぐことで、音の原因を指し示ながら波の様々なありようを切り取る。「砕け散る」のような複合動詞にもなっていない。ぶっきらぼうに雑魚寝しているようで、寄せてから散るまでの順番も顧慮されているかもしれない。日本の文学史上最高の海の描写だと信じて疑わない私がいる。唯一これに対抗できるのは、北斎の「神奈川沖裏波」くらいではなかろうか。泣きたい。
これを勅撰和歌集に採らずになんとする。
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