玉津島守
雪つもる和歌の松原古りにけり幾世経ぬらむ玉津島守 SWV572
後鳥羽院の絶唱「我こそは新島守よ隠岐の海の荒き波風心して吹け」のせいで「島守」には敏感に反応する脳味噌になっている。結句に「島守」が来るだけで看過できない。玉津島守とは和歌山県の和歌浦に鎮座する玉津島神社の神官をさす。見ての通り和歌の神様だ。つまりこの歌は和歌の神様へのオマージュである。万葉の伝統に従うなら「和歌の松原」は三重県らしいが、実朝が意図的か勘違いか和歌山県に転用しているということだ。「和歌の浦」「玉津島」と来れば当時の歌人たちはたちどころに「和歌の聖地」と認識することになっている。日本古来の和歌の伝統を思いやり、自分もそこに連なりたいというメッセージに違いあるまい。
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