湯速神験
伊豆の国山の南に出づる湯の速きは神の験なりけり SWV643
走る湯の神とはむべぞ言ひけらし速き験のあればなりけり SWV644
二所詣で知られる伊豆山の別名は走湯山だ。山上にあるお社から長い石段がふもとの海辺に続いている。そこには今でも小さな洞窟から温泉がほとばしり出ている。これが走湯山の由来であるばかりか「伊豆」の語源でもあるらしい。これらの歌はそうした事情をすべて手際よく歌に込めてある。お湯のほとばしる速さが、そのままご利益を引き寄せる速さでもあるのだろう。「むべぞ言ひけらし」とは「うまいことをいうもんだ」くらいのノリ。流麗な歌の調子もお湯の速さに負けていない。
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