青柳の
青柳の糸より伝ふ白露を玉と見るまで春雨ぞ降る SWV665
美しい。「玉」が宝石のことだとわかっていれば現代語訳不要だ。万葉集1598大伴家持「さを鹿の朝立つ野辺の秋萩に玉と見るまでおける白露」の本歌取り。第四句扇の要に「玉と見るまで」が鎮座し「白露」と重ね合わせるという構造は共通だ。家持の「秋&さを鹿&萩」を「春&青柳&雨」に呼応させている。「白露」と「秋」は相性がいいことは確かだから、春に場面転換するにあたっては「春」と相性がいい「青」を柳に添える工夫も見逃せない。
家持にとって白露は「置くもの」であるのに対し、実朝は「糸より伝ふ」ものと捉えなおした。追随した実朝が見せる繊細な感覚がまぶしい。「俺ならこうする」とばかりにさしかえた「糸より伝ふ」の語感につくづく共感する。この作品が定家所伝本で抜けているのはなぜだろう。定家が削除したとは考えたくない。定家に献上後に詠まれたものが、別に伝えられていて、柳営亜槐本で再録されたと思いたい。その再録が足利義政ならうれしい。
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