式年遷宮
神風や朝日の宮の宮うつし影のどかなる世にこそありけれ SWV659
二十年に一度行われる伊勢神宮の神事。もっとも最近は2013年だから、2013年から20年ずつさかのぼればいいかというとそうでもない。事情により延期されたこともあるし、内宮と外宮で別の年だったこともある。幸い「朝日の宮」は内宮のことなので、歴史を紐解くと実朝在世中は承元3年しかない。西暦に直すと1209年だ。珍しく詠作の時期が分かるお歌だ。式年遷宮を寿いで、世の中の平安を祈念したシンプルな内容である。実朝は鎌倉にいながら、歌で伊勢神宮を寿いだ。神風、朝日の宮に続く「影のどかなる」が焦点で、この言い回しは17歳の実朝のセンスが光る。周知のとおり、伊勢神宮は皇室の祖神であるから、式年遷宮への敬意は皇室への敬意と同義である。時の天皇は土御門帝の御代ではあるものの、父の後鳥羽院は上皇として健在だ。どこまでも朝廷への尊崇が厚い実朝である。
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