東の王
東の国に我が居れば朝日さす藐姑射の山の陰となりにき SWV662
「私は東国におりますので、朝日にまぶしく輝く藐姑射(はこや)のお山の陰に入らせてもらっています」くらいの意味。藐姑射の山とは中国で仙人が棲むという想像上の山だ。ここでは後鳥羽上皇の御所の意味に用いている。上皇への忠誠を誓う意図は明らかながら、鎌倉在住の征夷大将軍の自覚も潜んでいよう。「東」は「ひむかし」と訓ずる。人麻呂に「東の野にかぎろひの立つ見えて返り見すれば月傾ぶきぬ」と同じだ。「西」という単語を用いずに「西」を表す歌聖ならではの着想。人麻呂から学んだようでいて、丸写しを避け、「東の国」と用いた彼は東の王者だ。
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