ゆふだすき
みづがきの久しき世よりゆふだすきかけし心は神ぞ知るらむ SWV645
「昔から私が信心深いことは神もご存じですわ」くらいの意味。ではあるのだが、それを歌の域にまで持ち上げる実朝のさり気ない技巧である。まず初句。「みづがき」は「瑞垣」と書いて「神社の垣根」の美称であると同時に「久しく」を導き寄せる枕詞である。単に「神」の枕詞なら「千早ぶる」という大定番があるところ、こちらはぐっと新鮮な脇道。「瑞々しい」感じもかすかにほのめかしていよう。そして第三句にも枕詞が来る。「ゆふだすき」は「掛ける」の枕詞となっている。「ゆうだすき」自体の柔らかな語感も「みづがきの」と相反しない。一首に2つの枕詞を配置するちょっと見かけない例だ。言いたいことはシンプルながら。枕詞の重複によって和歌の語調が確保されている。
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