矢筋違ふな
世の中は押して放ちの相違なく思ふ矢筋よ神も違ふな SWV718
世の中も神のご加護を得て願い通りになってほしいと詠む。世の中の平安への祈りが、願い通りにかないますようにと神に念を押している。つまりそれは、そうはならないことが多いということの裏返しでもある。世の中が平安でないということは、神が狙いをはずしたからだという着想だ。自らの身辺の平安ではなく、世の中の平安を祈るところが支配者たる者の務めであるという自負が籠っている。そのことを強烈に印象付けるのが「矢筋」だ。世の中の平安に対する思いがいかに強くても、皇族や貴族が気軽に使える語彙ではない。実朝はそれを自然に配置する。
お正月と言えば破魔矢だ。
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