二重盲検法
薬効の確認をするための方法。本物の薬と偽薬を投与して効果の違いを客観的に測定するために用いられる。投与される治験者はもちろん、試験をする側にもどちらが偽薬かを伏せて行われるため「二重盲検」と称される。
何故このような方法が採用されるのかは、実はシンプルだ。人間の思い込みを検査結果から排除するためだ。逆に申せば人間の思い込みとはそれほど厄介だということだ。「イワシの頭も信心から」と。
場合によっては命にかかわる医薬品の効果の判定だから当たり前だとは思うが、一連のロジックは美しい。数多存在する医薬品候補の中から、晴れて医薬品と認められるための手続きとはいえ、この厳密さは心地よい。複数のものを客観的に比較評価するとはこういうことなのだと思う。
音楽業界では、「同曲異演」を収録したCDの比較対照が無視しえぬ大きなジャンルになっている。同一作品を演奏した複数の演奏間の優劣好悪に言及したサイトや書物は多い。
本日の文脈から見れば当然の疑問がある。
同曲異演のCD比較の論者は、はたして二重盲検法を採用しているのだろうか。
比較論の執筆者は、複数のCDの評価に際して、CD本体やジャケットに記された諸情報を見ずに再生しているのだろうか。演奏者の団体名氏名を含む情報を見ないまま、まず演奏を聴いただけで、比較評価して序列を決定し、然る後に隠しておいた演奏者名を書き加えるという手順が採用されているのだろうか。演奏の評価が既に確立済みの演奏家のイメージに左右されないためには必須の措置だと思うがどうだろう。
場合によっては命に影響する医薬品とは同列に論ずることは出来ないこと重々承知の上だが、気になる。
もちろん、ジャケットに書いてある演奏家の演奏が収録されているという点には、偽装は一切無いということが前提の話である。その点を一切疑わぬという意味を加えれば「三重盲検法」かもしれない。
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