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2023年2月28日 (火)

USB三昧

記事「脱CDの流れ 」で、買い替えた車にCD再生機能がないとわかって愕然とした話をした。それが世の中の主流だとも思い知らされた。

あらかじめUSBにCDを取り込んでおくしか方法がないともわかってきた。わかってみると悪くない話にも見えてきた。なぜなら、どうせ今までもドライブの前に聞きたいCDをチョイスして10枚程度持ち込んでいたのだ。数百曲取り込んであるIpodがもう使えないことを別とすれば、「事前のCDチョイス」だけなら何も変わらぬ。チョイスしてパソコンに取り込み、それをまたUSBに転写するだけだ。CD1枚のパソコンへの取り込みは5分程度、パソコンからUSBへの転写はあっとゆー間。5秒かも。1時間に10枚はいける。

USBのソケットの形が従来のA型と新しいC型とあり、パソコンはA型なのに車はC型という難問に直面したが、A,C両方の差し込みをもつUSBを発見してあっさり解決したのが大きい。

USBを車のC型ソケットに差し込む。タッチパネルで呼び出すと「アルバム」「アーティスト」「ファイル」「トラック」の4つの切り口からの検索が可能だ。アルバムはCDを取り込んだ際にパソコン上に保存されるアルバム名で、ほぼ「作曲家名」か「演奏家名」だ。「アーティスト」は演奏家。「ファイル」とはパソコンのCドライブを覗きこむ形。「トラック」は1個1個のトラック名がアルファベット順に羅列されるがあまり実用的ではない。慣れればトラック名以外の方法で効率よく目的の演奏に辿り着く。車内でCDの入れ替えをするより数段楽で安全だと実感。

かくして64GBのUSBを買い求めて、ひとまず常用作品を収録する。かなり入る。CDにしてざっと300枚分。時ならぬCD棚大整理になった。行方不明のCDも多数見つかった。「日常で聴きたいCD」という切り口で所有CDの大整理をすることに等しい。自らに課したルールは一つの作品には原則として一つの演奏だ。「同曲異演」の聞き比べという要素を犠牲にして常用CDの堆積につとめた。

ジャンルはおよそ下記。

<ブラームス> 室内楽すべて。ピアノ独奏曲すべて。管弦楽曲すべて。主要声楽曲。

<バッハ> 主要クラヴィーア作品。無伴奏作品すべて。コンチェルトすべて。ヴァイオリンソナタすべて。ガンバソナタすべて。ブランデンブルク協奏曲。声楽あえてすべて対象外。

<モーツアルト> 主要交響曲。後期ピアノ協奏曲、レクイエム、主要ヴァイオリンソナタ、ピアノソナタすべて、主要室内楽、魔笛、フィガロ、ドンジョヴァンニ、主要協奏曲。

<シューベルト> 主要歌曲、未完成交響曲、主要室内楽数曲。

<ヴィヴァルディ> 調和の霊感すべて。四季すべて。ヴァイオリンソナタop1op2すべて。ヴァイオリンソナタ数曲。

<ドヴォルザーク> チェロ協奏曲、新世界、第八交響曲、アメリカ四重奏、謝肉祭。

<メンデルスゾーン> ヴァイオリン協奏曲、交響曲すべて。

<その他> マーラー5番、モルダウ、ボレロ、サンサーンスVn協奏曲、パガニーニVn協奏曲すべて、シベリウスVn協奏曲、テレマンVa協奏曲、テレマン無伴奏Vnのためのファンタジア、リスト前奏曲、ワーグナー序曲数曲etc

楽しい作業だった。64GBがあっという間に埋まった。自分の音楽鑑賞史の再点検となった感じ。

 

2023年2月27日 (月)

ベートーヴェンで1か月

1月24日63歳の誕生日を機に恐るおそるベートーヴェンに言及を始めた。手始めにピアノソナタを選んだがほぼ1か月ピアノソナタで間が持った。「やればできるやん」という感じ。

あたたまってきた。

2023年2月26日 (日)

地味に大事なこと

昨日に続いてハンスフォンビューローのお話。ブラームスの親友。大指揮者であり大ピアニストであると同時に音楽評論家。バッハの平均律ピアノ曲集をピアノ音楽の「旧約聖書」とし、ベートーヴェンのソナタを「新約聖書」と称したり、現代まで語り継がれるエピソードには事欠かない。

ブラームスの歴史的位置づけを表す彼のことばがある。ブラームスの第一交響曲を「ベートーヴェンの第十」と呼んだことだ。交響曲史上におけるブラームスの位置づけをベートーヴェンをツールに言い表したと考えられる。

そのビューローは、ブラームスの1番のピアノソナタを「ベートーヴェンの33番」とは呼んでいない。弦楽四重奏も同じくブラームスの1番に「ベートーヴェンの17番」という称号を与えていない。ヴァイオリンソナタやチェロソナタ、あるいは協奏曲も同様だ。

ブラームスにもベートーヴェンにもバッハにも精通し、ピアノ演奏も超一流な上に現代指揮法の確立者であったビューローの歴史観の反映だ。交響曲だけが特異な扱いだとわかる。

噛みしめたい。

2023年2月25日 (土)

コピーライター

商品や企業を宣伝するための広告に文章を提供するする人のこと。文章よりも短い見出しという側面も濃厚に漂う。広告の受け手の心を一瞬でつかむことが強く求められる。それらの文章は、肝心な商品や企業の実態はさておき、受け手の心をキャッチすることが目的であることが多いため、「キャッチコピー」という言い回しもされている。商品に億単位の売り上げをもたらすこともある広告戦略のはずせぬ柱である。

売れっ子のコピーライターともなれば寝る間も無い激務ともなるが、報酬も桁外れである。

音楽の世界に目を移せば、ブラームスはコピーライターの素養が豊かとは言えない。若い頃に物議を醸した例の決議文もキャッチコピーとしては影が薄い。自作の宣伝も積極的とは言えまい。

音楽の才能と文学の才能を併せ持った人たちには、コピーライターの素質さえ感じることがある。ロベルト・シューマンがすぐに思い浮かぶ。ショパンやブラームスを紹介する記事は特に有名だ。その言い回しは今もって語りぐさである。ワーグナーにもその才能を認めることも出来よう。

この面で不器用だったブラームスに代わって機能を補った友人がいる。指揮者でピアニストのハンス・フォン・ビューローである。

聴衆の心を一瞬でつかむという点において驚くべき才能を持っていた。バッハ、ベートーベンにブラームスを加えて「3大B」と命名したのがビューローである。この言い回しは時代を超えて人々に受け入れられている。第一交響曲を「ベートーヴェンの第10交響曲」と呼んだのも彼だ。もっともらしさという点では出色である。バッハの平均律クラヴィーア曲集を「旧約聖書」、ベートーヴェンのピアノソナタを「新約聖書」にたとえたのもまた、彼の仕業である。大づかみにして見せるという点において、さすがとうならせる物がある。音楽とは別系統のある種の才能だと感じる。

指揮者は自分は音を出さない音楽家だ。自分の考えをオーケストラのメンバーにキチンと伝えねばならない。限られた時間に自らの考えを効率的に伝えるには、「キャッチコピー」はうってつけである。ビューローのコピーライター然とした才能は、指揮者に必要な才能の一つだと思われる。彼が19世紀最高の指揮者だと評価されているのは偶然ではあるまい。

2023年2月24日 (金)

100番越え

作品番号のお話。後世の研究家が後付けした作品目録番号ではなく、作曲家本人が関与したケースを例にとる。バッハやモーツアルトあるいはドヴォルザークでは機能しない。

ベートーヴェンを例にとると100番を超えると後期作品ということになる。ピアノソナタだと28番以降で、弦楽四重奏だと12番以降。交響曲は第九だけ。ミサソレムニスもだ。その代わり、コンチェルトは存在しない。ヴァイオリンソナタやチェロソナタにも「後期」はない。その後期はというとやけに長くなる。楽章が増えるし、場合によっては楽章の切れ目がなくなる。演奏時間も伸びる。難解さが増す印象。曲の流れがいささか犠牲になる。

中学から高校にかけて、私はその難解さにあこがれた。弦楽四重奏でいえば13~15番が好きだった。ピアノソナタで申せばハンマークラヴィーアと並んで31番の変イ長調が大好きだった。今改まって聴くとハンマークラヴィーアはともかく31番の何にひかれたのか思い出せない。第3楽章のフーガに興味があったかもしれぬ。弦楽四重奏側でいう「大フーガ」と双璧をなす難解なフーガ。作曲上の技法ではなくて、難解なフーガを作ることが目的になった感じ。そういえば晩年のバッハにも「フーガの技法」があった。

変な高校生だ。

2023年2月23日 (木)

ワルトシュタインの見せ場

そりゃ昔は、ワルトシュタインの冒頭が印象的だった。8分音符の和音連打。やがては16分音符に推移。所せましと走り回るという風情。旋律ではなくモチーフの堆積でソナタ楽章を組み立て上げるというベートーヴェンに特有の現象と説明されてすんなり納得していた。

ところが、歳のせいか最近、フィナーレが気になっている。第2楽章がほとんどフィナーレの序奏という扱い。走り回る第一楽章とは対照的だ。テンポ指定も「Allegretto moderato」という収まりっぷりだ。きれいな旋律が16分音符の絶え間ない流れによって修飾される。地味に左右の手が交差させて弾かれるのだが、聴いている限りは平明な印象。このロンド主題が都度都度違う伴奏を引き連れて現れる。華麗なスケールがとりわけ印象深い。なんせグールドがこの曲の録音を残していない。私的ランキングの1位はレーゼル。第一楽章に重心をおいて聞いているとグルダなのだが、フィナーレを中心に聴くとレーゼルだ。音がきれい。

15歳のブラームスがどう弾いたのか。

2023年2月22日 (水)

ピアノ曲の演奏年齢

ブラームスのヴァイオリン協奏曲の解説を読んでいると、キラ星のごとき名手たちのエピソードで彩られていることが実感できる。初演者ヨアヒムはもとより、第2楽章を皮肉ったサラサーテ、飛行機事故で世を去ったヌヴー、レーガーのカデンツァであっと驚かせたクレーメルなどなどだ。

手が大きくないと難しいというヨアヒムの危惧をよそに、10代半ばで弾いたという話も少なくない。ブラームスに直接賞賛されたフーベルマンを筆頭にシェリング、メニューインと続く。この人たちは「アンダー15」でブラームスのヴァイオリン協奏曲を公開の席で演奏したのだ。ということは練習だけは10歳になる前からしていた可能性もある。

早熟の天才のエピソードに事欠かないヴァイオリン協奏曲に対してピアノ協奏曲の方は、なぜかその手の話が少ないように感じている。話をピアノ協奏曲に限定せず、ピアノ曲と考えると、「アンダー15」の出る幕もあろうが、協奏曲ではとんと聞かない。

当たり前のことだが、ピアノには分数ピアノはない。小さな子供も大人と同じサイズの楽器を弾くことになる。たとえばブラームスに頻発するオクターブが弾けるようになるのは、ある程度手が大きくならねばならない。それに対してヴァイオリンは体格に合わせて楽器のサイズを変えて行くから、そうした心配はない。ヴァイオリンに比べて「アンダー15」の活躍話が乏しいのは、そのあたりの事情が関係しているのではないだろうか。

ワルトシュタインを15歳で弾いたブラームスの位置づけやいかに。

 

2023年2月21日 (火)

脱CDの流れ

訳あって5年乗った車を更新した。年明けくらいから交渉していたが、2025年以降ガソリン車の新車販売は姿を消すとも騒がれる中、熟考の末ガソリン車にした。80歳で免許返納を考えるにしてもあと17年ある。次の買い替えはおそらくガソリン車ではあるまい。

購入交渉の中で最も驚いたのはオーディオだ。早い話が「CD」の再生ができないということだ。市場としては終わっていて若者はダウンロードに流れ去っているらしい。娘に聞いてもスマホがあれば月数百円で数万曲聴き放題などと平然と言っている。そうしたダウンロード音楽市場がオールドクラシック愛好家の「同曲異演」蘊蓄に対応しているのか疑問だ。

ドライブの楽しみは音楽だというのにどうしようというのが車そっちのけの課題になった。2000枚近いCDを車で聞けなくなるとは。方法は下記くらい。

  1. ブルートゥース機能付きのポータブルCDプレイヤーを車内に持ち込む。
  2. ドライブ中聴きたいCDをあらかじめUSBに取り込んでおく。

納車から2週間経過した。

安いプレーヤーを急遽購入したが接続できない。おまけにIpodも接続できないと判明。USBの入口がC型だ。A型への転換のアダプタを差しはさんでもIpodが反応しない。そりゃかれこれ20年前のIpodだから止むをえまいとあきらめようにも2000曲以上入っているのになんということだ。

2000cc直噴ターボの四駆などというエコに反する車を選んだせいかと恐るおそる聞いてみると、いやいやもう今はみなCD聞けませんよと気の毒そうな返事が返ってきた。

USBに取り込むしか手がない。

2023年2月20日 (月)

フラット3個マニア

調号としてフラット3個を仰ぐのは「変ホ長調」と「ハ短調」だ。平行調という。ベートーヴェンはどうもこの2つが好きだ。

<ピアノソナタ>

  • 変ホ長調 4番、13番、18番、26番
  • ハ短調 5番、8番、32番

合計32曲のうち7曲がフラット3個を冠する。勢いで他のジャンルを調べる。

<交響曲>

  • 変ホ長調 3番「英雄」
  • ハ短調 5番「運命」

<ピアノ協奏曲>

  • 変ホ長調 5番「皇帝」
  • ハ短調 3番

<八重奏曲>

  • 変ホ長調 

<七重奏曲>

  • 変ホ長調

<弦楽四重奏>

  • 変ホ長調 10番、12番
  • ハ短調 4番

<ピアノ三重奏>

  • 変ホ長調 1番
  • ハ短調 3番、6番

<弦楽三重奏>

  • ハ短調 3番

<ヴァイオリンソナタ>

  • 変ホ長調 3番
  • ハ短調 7番

以上。合計すると変ホ長調が12曲、ハ短調が10曲となる。多楽章ソナタ形式の第一楽章に変ホ長調やハ短調を採用しやすいキャラだとわかる。空白はヴァイオリン協奏曲とチェロソナタくらい。特にピアノソナタやピアノ三重奏曲、ヴァイオリンソナタにおいては同一ジャンル内に複数の曲が同じ調を共有する例が認められる。ブラームスにはありえない現象。バロック時代には珍しくもなかったのだが、あの時代の多作ぶりとは違うはずだ。こうしてみるとピアノソナタというジャンルの異質ぶりが際立つ。

 

 

2023年2月19日 (日)

旧暦正月二十七日

今日2月19日は、旧暦では正月二十七日。健保七年の今日、源実朝が右大臣拝賀に訪れた鶴ケ丘八幡宮で公暁に討たれた。

吾妻鑑の記述を信ずるなら

「出で去なば主無き宿となりぬとも軒端の梅よ春を忘るな」という伝実朝辞世は804年前の今朝詠まれたことになる。

源実朝特集後初めて迎える命日。だからさしものベートーヴェンネタも中断。

せめて今日は一日ピアノソナタの12番「葬送」でも聴いていようか。

2023年2月18日 (土)

Because月光

もはや都市伝説の域か。ビートルズの「Because」とベートーヴェンの「月光」の第1楽章の関係のことだ。珍しく4名がヴォーカルに参加して荘重なハーモニーを聞かせるが、この曲が月光ソナタを下敷きにしているらしい。ハーモニーが似てるほか、訳ありげな三連符が怪しい。テキストには月光を疑わせる部分はないけれど、雰囲気だけでもそれらしい。

2023年2月17日 (金)

初カンタービレ

最初に買ったLPに収録されていた悲愴の2楽章に打ちのめされた。「あのベートーヴェンがこんなにきれいな曲を」という衝撃だった。運命交響曲の第2楽章以上の衝撃だ。どちらもハ短調の第1楽章に変イ長調の緩徐楽章が続く。調的枠組みが同じと気づいたのはずっとあとのことだ。

悲愴の第2楽章は今もその輝きを失わない。楽章冒頭には「Adagio cantabile」が鎮座する。生まれて初めてこうした楽語に興味を持った。この旋律を思いついたベートーヴェンが、演奏家に感覚を伝えるために選んだのが「Adagio cantabile」ということだ。「歌うように」という意味にもすぐにたどり着いた。その後50年今もブログ上で付き合っている音楽用語への最初の興味だ。

ベートーヴェンの他の作品にも頻発する「Cantabile」がブラームスでは不気味な空白区を作っていることに気付くのはさらに30年後のことだった。

2023年2月16日 (木)

ゼプテットより

20番ト長調が第2楽章メヌエットにさしかかると、あれっと思う。どこかで聞いた旋律。七重奏曲変ホ長調op20のメヌエットとからの転用だ。

この七重奏曲は、私が初めて取り組んだベートーヴェンの室内楽だ。カルテットではなくてこれだというのが我ながら感心する。大学1年か2年。第一ヴァイオリンに上手な先輩を仰ぎ見て初心者ながら楽しかった。

2023年2月15日 (水)

テンペスト

今や脳内ピアノソナタランキングの首位をワルトシュタインと争う位置にいる。作品31を構成する3つのソナタの真ん中。ベートーヴェン唯一のニ短調のピアノソナタ。第九と同じ調ではあるけれど、ニ短調ってベートーヴェンではあまり見かけない。短い2楽章を挟んだ1楽章とフィナーレの対比。とりわけフィナーレだ。16分音符が駆け巡りはするのだがベートーヴェンの指定は「アレグレット」にとどまっているのが印象的。

この引き留めを真に受けてじっくり聞かせるのがレーゼルで、「知らん」とばかりに疾走するのがグールドかと。この2人にグルダを加えた3人の演奏だけは目隠ししていても判別可能だ。

昨日話題にした「狩」のひとつ前。作品31を構成するのだが、残る1曲第16番ト長調もとてもいい。作品31恐るべし。これらまとめて1つの作品番号だなんてもったいない上に、誰にも献呈されていないとは。

2023年2月14日 (火)

狩のソナタ

50年前からはまった三大ソナタ「月光」「悲愴」「熱情」の陰に隠れてきたが、じっくりと聴きこむに及んで脳内マインドシェアを上げた曲がある。18番変ホ長調「狩」op31-3だ。作品31を構成する3つのソナタのラスト。三大ソナタやワルトシュタイン、テンペストに比べて劣っているのは知名度だけな気がする。

緩徐楽章がない。メヌエットとスケルツォを別に持つ。フィナーレのプレスト・コン・フォコによる異例の煽り。などなど突っ込みどころ満載。演奏家による違いがこのフィナーレで顕著。速ければ速いほどそれっぽいので、グルダの独壇場だ。グールドは意外にも速くない。人が速く弾くところで速くしないのがお約束だ。それにしてもグルダは爽快。

2023年2月13日 (月)

最初の3曲

ベートーヴェンのピアノソナタの最初の3曲は以下の通りだ。

  • 1番ヘ短調 op2-1
  • 2番イ長調 op2-2
  • 3番ハ長調 op2-3

出版社に3つまとめて渡して、この順序を本人が指定したのだろうと思う。

ブラームスのピアノソナタは以下の通りだ。

  • 1番ハ長調 op1
  • 2番嬰へ長調 op2
  • 3番ヘ短調 op5

ベートーヴェンと比べると1番と3番がヘ短調とハ長調で逆になっている。中央の2番はベートーヴェンのイ長調に対してブラームスは嬰ヘ短調。この両者は楽譜上の調号では「シャープ3個」つまり平行調の関係にある。先行するベートーヴェンは預かり知らぬ話だが、追随したブラームスには何らかの意図がなかったか疑っている。

クララシューマンに浅からぬ関係のある作品には嬰へ調が頻発する現象を思うに。イ長調を平行調に変えて作品2に据えてみせるのは必然という気もする。

この先の作品について調べられればいいのだが、ブラームスは最初の3曲を最後にピアノソナタに着手しなかった。おかげでおバカな妄想で1本記事が書けた。

2023年2月12日 (日)

ヘ短調ソナタ

出版可能なピアノソナタが3つあった。

  • ヘ短調
  • イ長調
  • ハ長調

である。ベートーヴェンはハイドンにこれらを捧げつつ、どれを1番に据えるか考えた。結果として1番に選ばれたのがヘ短調だ「ピアノソナタ第1番ヘ短調op2-1」として現代に伝わる。

ヘ短調ソナタは「23番熱情」がとても有名だが、ここにもあった。のちにベートーヴェンの創作の柱となるピアノソナタの先頭がへ短調というのは意外な気もする。バッハのインヴェンションには採用されていないことからもわかる通り、調の常用域からは少し外れているからだ。「フラット好き」というベートーヴェンの傾向が早くも表れているようで興味深い。

2023年2月11日 (土)

最優秀変奏曲

三大ソナタにあこがれた中学生のころ、23番「熱情」の第二楽章が好きだった。短調の楽章に挟まれて、何やら近づき難い変ニ長調だというのに、聞いた感じは平明で透き通った感じ。変奏が進むにつれて音価が細かくなっていく。休みなくフィナーレに続くのも好きだった。

今、熱情ソナタは私的ベスト3から脱落したけれど、この第二楽章だけは最優秀変奏曲の座を争っている。

争うには相手がいる。

それは第12番の第一楽章だ。フィナーレに葬送行進曲を置くため「葬送」ともいわれるこのソナタ、実は中学時代にはまったく視野に入っていなかった。初めて聞いたのは社会人になってからだ。ソナタ形式を欠くソナタとしてモーツアルトの「トルコ行進曲付き」があるけれど、これも第一楽章が変奏曲になっている。モーツアルトに劣らず美しい。

ソナタの一部でなければブラームスのシューマンヴァリエーション、あるいはヘンデルヴァリエーションもある。いかんいかんバッハさんのゴールドベルク変奏曲も入れてあげねば。

 

2023年2月10日 (金)

ブラ4の先取り

ブラ4とはブラームスの第4交響曲のことだ。H-G-E-C、A-Fis-Dis-Hで始まる第一楽章についてもしやという話をする。

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ベートーヴェンのピアノソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」の第三楽章の78小節目。「3度下降&6度上行」のフレーズが見ての通り意味ありげに連続する。ダブルバー明けの85小節以降6度も排除され、3度下降だけが決然と連鎖する。調も拍子も違うが、ブラームスの第四交響曲冒頭の主題に似ている。

2023年2月 9日 (木)

ハンマークラヴィーアのエコー

ブラームスのピアノソナタ第一番ハ長調のことだ。ベートーヴェンの29番変ロ長調「ハンマークラヴィーア」と第一楽章の出だしが似ている。

そもそもブラームスは、最初の作品を出版すると決めたとき、手元には完成した作品が複数あった。それらのうちどれを「op1」にするか選択の余地があったということだ。ピアノソナタで申せば現在「op2」になっている嬰ヘ短調の方が先に完成していたとも言われている。クララシューマンの影響色濃く反映する嬰ヘ短調をop2にしたい意向が強く働いて、半ば消去法的にハ長調がop1となった形跡がある。これがヨアヒムに献呈されて1番を背負ったのだが、冒頭はハンマークラヴィーアソナタに似ている。

作品1の出版はどんな伝記でもそこそこ語られる上に、ベートーヴェンとブラームスの関係を云々する際には恰好のネタだ。

2023年2月 8日 (水)

15歳のワルトシュタイン

1849年4月14日。15歳のブラームスは故郷ハンブルクでピアノリサイタルを開いた。好意的な批評が新聞に残されている。このときのメインプログラムがベートーヴェンのピアノソナタ第21番ハ長調op53「ワルトシュタイン」だった。ブラームスの伝記に初めて現れるベートーヴェンの痕跡だ。15歳でこの曲を弾くことがどれほどすごいのか実感は持てていないが、古典への敬意だけは伝わってくる。

どんな演奏だったのだろう。

2023年2月 7日 (火)

三大ソナタ考

ピアノソナタ32曲の中から3曲を抽出するとなると議論百出で面白い。ベートーヴェンのことだ。3曲しかないブラームスではそもそも機能しない。

一般にベートーヴェンの三大ソナタといえば「月光」「悲愴」「熱情」とされている。中学生で買い求めたLPもこの3曲が収められていた。鵜呑みにした。全部短調でいいのかとは思わなかった。

あれから50年。今の私なら「悲愴」「テンペスト」「ワルトシュタイン」になる。

 

 

2023年2月 6日 (月)

聴き比べの横展開

記事「聞き比べの実情」で、悲愴ソナタの第三楽章でピアニストの違いによる演奏の違いを聞き比べにチャレンジしていると書いた。念のためお断わりすることがある。これを中学時代にやれていたわけではない。LPレコードとテープデッキではどうにもならぬ。CDとパソコンを駆使してこそ可能だ。中学から高校大学にかけてLPが主流だった時代に、同曲異演の聞き比べをしようと思ったらかなり大変だった。悲愴ソナタの3楽章だけをパソコンに取り込んで、CDに落とせば簡単にできる。

実は実は、悲愴ソナタの3楽章以外にも聞き比べCDを作ってみたのだ。今のところ下記の16種類。

  1. 1番の1楽章 9人参加
  2. 5番の3楽章 7人参加
  3. 7番の1楽章 7人参加
  4. 8番の3楽章 13人参加 悲愴ソナタ
  5. 10番の1楽章 7人参加
  6. 11番の4楽章 7人参加
  7. 12番の1楽章 6人参加
  8. 14番の1楽章 11人参加 月光
  9. 16番の1楽章 8人参加
  10. 17番の3楽章 8人参加 テンペスト
  11. 18番の3楽章 8人参加 狩
  12. 20番の2楽章 7人参加 名高いメヌエット
  13. 21番の1楽章 7人参加 ワルトシュタイン
  14. 23番の1楽章 7人参加 熱情
  15. 29番の1楽章 6人参加 ハンマークラヴィーア
  16. 32番の1楽章 7人参加

これを作ってシコシコ聞き比べにいそしんでいる。暇の極致。この度の「リベートーヴェン」なる企画を心に決めた2年前から始めてここまできた。「なんだお前はベートーヴェンも好きなんじゃないか」と言われそうだ。昔取った杵柄というやつだ。聞いてて懐かしくて仕方がない。中学時代の視点や切り口を思い出せない。

不思議なことにこれらでも先に示した3人、グルダ、グールド、レーゼルの優位は動かない。曲により聞き込み度はばらつくが、この3名はほぼわかる。ような気がする。

2023年2月 5日 (日)

聞き分けの実情

昨日の記事「悲愴の13人」で、ハ短調ソナタ「悲愴」op13の第三楽章だけを13人のピアニストで聴き比べる話をした。実は実はこれには目的がある。これをランダム再生してトラックNoを隠したまま聞いて演奏者を的中させられるかという訓練をするためだった。

1番のシュナーベルは音質が悪いのですぐにわかるようになる。13番のオピッツも何やら浴室で弾いているような響きがするのですぐに判別が可能になった。でもそれはピアニストの解釈や弾き方で聞き分けていないので本来は邪道だろう。鼻歌でばれるグールドも反則なのだが、実際彼はテンポが大抵極端なのでほぼわかるようになる。

残りの10人は難解だ。でも繰り返し繰り返し聴いていると見当はつくようになる。そして自分の中での順位をつけてみる。悲愴の3楽章に限って申せば、私的ベスト3は下記。間をあけて何回聴いても彼らがベスト3を構成する。

  1. グルダ
  2. グールド
  3. レーゼル

同時にこの3人の演奏は目隠しして聴いてもほぼわかる。実は不思議なことに、同曲の他の楽章を聴いてもこの3人はわかる。

 

2023年2月 4日 (土)

悲愴の13人

昨日の記事「格闘の痕跡-ピアノ編」でお示したリストを思い出していただく。今はやりの13人になっているのはご愛嬌として、彼らのCDを持っていた。ベートーヴェンのピアノソナタのCDを1枚以上持っている人たちのリストだ。ベートーヴェンのピアノソナタ32曲のうち、たった1曲8番ハ短調だけこの13人の演奏で聴くことができる。だから「悲愴の13人」で、おまけに悲愴の作品番号は「13」である。三大ピアノソナタにも入っている有名作品だから、LPやCDを進んで買い求めた痕跡である。このうち第三楽章だけを以下の順にCDに取り込んで楽しんでいる。録音年を添えておく。

  1. シュナーベル 1934
  2. ケンプ 1953
  3. フィッシャー 1954
  4. バックハウス 1959
  5. ゼルキン 1962
  6. アラウ 1963
  7. グールド 1966
  8. グルダ 1968
  9. バドゥラスコダ 1969
  10. エッシェンバッハ 1975
  11. レーゼル 1982
  12. ブレンデル 1994
  13. オピッツ 2004

大学までに買い求めていたのは9番くらいまでかもしれない。こうして第三楽章ばかりを立て続けに聴くと大変面白い。ドライブのおともに最適だ。あらためて悲愴はいい曲だ。全楽章だと1枚に収まらないための苦肉の策。

2023年2月 3日 (金)

格闘の痕跡-ピアノ編

たとえば以下のリストをご覧いただく。

  1. シュナーベル 1882/4/17
  2. バックハウス 1884/3/26
  3. ケンプ 1895/11/25
  4. アラウ 1903/2/6
  5. セルキン 1903/3/28
  6. フィシャー 1914/7/5
  7. バドゥラスコダ 1927/10/6
  8. グルダ 1930/5/16
  9. ブレンデル 1931/1/5
  10. グールド 1932/9/25
  11. エッシェンバッハ 1940/2/20
  12. レーゼル 1947/2/2
  13. オピッツ 1953/2/5

私のためにベートーヴェンのピアノソナタを弾いてくれているピアニストの一覧だ。一応は歳の順。この人たちのCDを今持っているということだ。中学時代に買ったLPで演奏者のわからぬものはこのリストにない。LP時代が去ってCD時代になって以降、CDを買い求めた人たちということになる。ベートーヴェンに限ってのリストであることは再度強調しておきたい。

ドイツオーストリア系に極端に偏る。それも古い人ばかり。当時の音楽雑誌の刷り込みがいかに強烈だったかわかる。女子は6番のアニーフィッシャーだけだ。当時誰が好きだったかあまり覚えていない。ロシア楽派が不当に冷遇されているが、もちろん政治的意図はない。

お断りしておくと、今はやりの13人なのは偶然だ。

2023年2月 2日 (木)

楽しみの二本柱

一昨日と昨日の続き。

クラシック音楽というジャンルにおいて、「同曲異演」の比較は盛り上がる。学問にまで高めることを諦めれば、格好の酒の肴である。「演奏家論」「指揮者論」などというのもはばかられるような「演奏家ネタ」は大変盛り上がる。「作曲家ネタ」と合わせて楽しみの二本柱だと断言したところで、炎上には至るまい。ボヤで収まるはずだ。

ブログ「ブラームスの辞書」はこのうちの作曲家ネタに重心を置いていた。せっかく二本柱があるのに片方を留守にしてきたという自覚だけはもっている。理由は明快。目隠しして聴いてもわかる作曲家側だけを取り上げておきたいといういじけた心理のせいだ。自分が聞き分けられもせぬのに演奏家の好みをあれこれ取り沙汰するのもいかがかと。

ところが、一連のシューベルトネタをこね回すうちに、歌手だけは比較的聴き分けられそうだとわかってきた。あるいはピアノの場合グールドだけが鼻歌は別としても少しは区別できる。要は好きな演奏家はだんだんわかるようになるということだ。中学高校とお金がなくて1つの作品に複数のレコードをなかなか買えずにきたことも一因かもしれない。要は聴き込みが足らんということだろう。

好きな作曲の作品について大好きな演奏家であれば、そのうち聴き分けることができるかもしれない。

ブラームスに加え、ベートーヴェンの力も借りながら、演奏家ネタの比重を少しずつ増やして行くことにする。

2023年2月 1日 (水)

盲目同然

昨日の記事「二重盲検法」の続きだ。私自身の耳のことである。同曲異演のCDをジャケットの記載を見ずに再生した場合、演奏家を聞き分けられない。これが作曲家ならかなりわかる。とりわけブラームスの作品かどうかはほとんど聞き分けられる。これに比べると演奏家を的中させるのは至難の業だ。中学時代に始まった悩みは、今もって保存されていると申していい。

きゅうりかトマトかは目隠しして食べてもわかるが、それらの産地は当てられないのと似ている。

訓練や経験を積むことでカバー出来るのかとも思うけれどあきらめてもいる。もとよりブログ「ブラームスの辞書」は学問的厳密さを放棄しているから何ら支障はないが、そうした諦めが前提になっている。聞き分けられもしないのだから「同曲異演ネタ」をてんこ盛りするわけにも行かないという論法だ。盛り上がるかどうかとはまた別の話だ。

中学時代には、いつかはきっと聞き分けられると思い込んでいた。

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