ピアノ曲の演奏年齢
ブラームスのヴァイオリン協奏曲の解説を読んでいると、キラ星のごとき名手たちのエピソードで彩られていることが実感できる。初演者ヨアヒムはもとより、第2楽章を皮肉ったサラサーテ、飛行機事故で世を去ったヌヴー、レーガーのカデンツァであっと驚かせたクレーメルなどなどだ。
手が大きくないと難しいというヨアヒムの危惧をよそに、10代半ばで弾いたという話も少なくない。ブラームスに直接賞賛されたフーベルマンを筆頭にシェリング、メニューインと続く。この人たちは「アンダー15」でブラームスのヴァイオリン協奏曲を公開の席で演奏したのだ。ということは練習だけは10歳になる前からしていた可能性もある。
早熟の天才のエピソードに事欠かないヴァイオリン協奏曲に対してピアノ協奏曲の方は、なぜかその手の話が少ないように感じている。話をピアノ協奏曲に限定せず、ピアノ曲と考えると、「アンダー15」の出る幕もあろうが、協奏曲ではとんと聞かない。
当たり前のことだが、ピアノには分数ピアノはない。小さな子供も大人と同じサイズの楽器を弾くことになる。たとえばブラームスに頻発するオクターブが弾けるようになるのは、ある程度手が大きくならねばならない。それに対してヴァイオリンは体格に合わせて楽器のサイズを変えて行くから、そうした心配はない。ヴァイオリンに比べて「アンダー15」の活躍話が乏しいのは、そのあたりの事情が関係しているのではないだろうか。
ワルトシュタインを15歳で弾いたブラームスの位置づけやいかに。
« 脱CDの流れ | トップページ | ワルトシュタインの見せ場 »
コメント