セリオーソ
ほぼスケルツォという体裁の第3楽章に「Allegro assai vivace ma serioso」という指定がある。このことが命名の要因ではなくて、物の本によればもともと作品全体が「Quertett Serioso」というタイトルがあったのを出版の際に脱落したとある。難解を極める後期の門前ではあるが、むしろとても簡潔。「ベートーヴェンすなわち難解」という刷り込みに半ば憧れていた高校生には拍子抜け気味。
スケルツォはベートーヴェンがソナタの第3楽章に置いた舞曲だが、もともとは「諧謔」の意味だ。だから逆説の接続詞「ma」を挟んで「まじめに」と念押しするのは理には適っている。
第一楽章提示部にリピート記号を欠く。緩徐楽章がアレグレット、第二楽章から第三楽章が切れ目なく演奏される。などなど突っ込みどころには事欠かぬけれど、後期の前では霞むという意味で損していた。
今になって貴重だ。
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