ガリツィン侯爵
ベートーヴェンが弦楽四重奏曲12番、13番、15番を献呈したロシアの貴族。7番から9番の3曲を献呈されたラズモフスキー伯爵よりは格上なのだと思うけれど、ペテルブルクの音楽好きくらいな認識しかない。「ラズ1」「ラズ2」「ラズ3」のような略され方もされていない。後期四重奏曲の幕を開ける12番変ホ長調が「ガリ1」と呼ばれている形跡はない。「ガリ2」「ガリ3」も聞かない。語呂が悪いせいかとも勘ぐっている。
最初の完成は12番で、次が15番、そして13番がしんがり。ますます難解だ。こんな弦楽四重奏を献呈されて、さくっ弾けてしまう弦楽四重奏団がガリツィン侯爵の周りにいたのかと心配になる。
とはいえ高校生の私は、この複雑さ、難解さに憧れた。堰を切ったようにズブズブとはまり込んだ。もしガリツィン侯爵からの依頼が無かったら、これだけの楽想が日の目を見なかったのかと思うと、背筋が寒くなる。芸術的な衝動の発露ではなく、依頼への対応だというのが、にわかには信じられない。
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