演奏家の刷り込み
それにしても不思議だ。中学時代以降クラシック音楽に目覚めて、レコード鑑賞に明け暮れた。最初に買い求めた演奏が脳内に刷り込まれてしまい、他の演奏に親しめないケースが多々ある。LPがCDにとって代わり、処分したLPのうち、お気に入りだけはCDを買い戻した。興味が別ジャンルに移行するとき、そうした刷り込みが最初に買い求めるCDを選ぶ際の下敷きになるケースも多い。
今回の常用USB作成にあたって、「1曲1演奏」の自主規制を守るということは、つまりもっともお気に入りの演奏を選ぶことに他ならない。いざ目隠しして聴けば正確に聞き分けが出来ないにしても、先入観込みで1曲チョイスになる。
たとえば、ヴァイオリニスト、ヘンリク・シェリングだ。中学時代、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のレコードを初めて買い求めたのが彼の演奏だった。彼の知名度や実力をよくわからないまま買っていた。当然、スプリングソナタもクロイツェルソナタも彼の演奏を選んだ。やがてバッハに興味を持った。ヴァイオリンソナタ、そして極めつけが一連の無伴奏作品。気が付けばメンデルスゾーンも彼だ。やがてブラームスに目覚めても、コンチェルトは元よりヴァイオリンソナタやピアノ三重奏曲だってシェリングだった。
そういえばモーツアルトもメンデルスゾーンも判で押したようにシェリング。
グリミォーやスークだって好きなのに1枚ならシェリングだ。例外はヴィヴァルディのアッカルドくらい。当時まだ古楽器は台頭しておらず、ビオンディは敷地外だった。
もはやお守りだ。いろいろ鑑賞経験を積んだ今でもシェリングは落ち着く。
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