苦悩を克服して歓喜へ
ドイツ語では「Durch Leiden zur Freude」となっている。いささか重たい「苦悩を克服して歓喜へ」という和訳にもかかわらず、これがベートーヴェン第5交響曲のモットー扱いだ。第一楽章で運命に扉を叩かれてから、紆余曲折の末フィナーレの勝利に達する流れを端的に示す働きがある。中学生の私はこれにすっかりはまった。ベートーヴェンの作品がすべてこのモットーを下敷きにしているかのような錯覚が心地よかった。短調で始まった曲が、フィナーレで同名長調に辿り着くという、いわば定型に慣れ切る前だった。
ブラームスの第一交響曲にそれが投影しているとわかったのは大学生になってから。
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