最先端医療
かかりつけの眼科医から網膜剥離の手術のためにと紹介されたのは、総合病院だった。昨今白内障の手術日帰りを謳う病院も多いが、網膜剥離ともなると、そうも行かぬらしい。かなりな「一大事感」がある。
11月1日恐る恐る外来を受診してみるとピカピカの大病院だった。玄関、受付スペース、待合室が広くて明るい。レストランもカフェもある。念のためにと前日初診外来を電話で予約しておいて正解。早朝から大混雑だ。診察にたどりついたもうその時点でほぼ手術前提となっているようで、検査がやけに念入り。院内別場所を指示されて、行く先々で30分待ち。検査をすべて終えて再度診察になったのは昼近くだった。
検査結果を手に、先生が手術の必要性を説明してくれた。息子よりは少し年長とおぼしき先生は、終始笑顔で丁寧な説明。手術の必要性がリスクとメリットを隙なく折り混ぜてロジカルに語られるのだが、シンプルでクリア。こちらの様々な事情にも配慮して、ギリギリ待てる日程として「11月6日入院、7日手術」と決まった。初診外来で診てくれた先生その人が、主治医でありかつ執刀医となる仕組みと知って安心。網膜剥離の手術のついでに、白内障の手術も同時に行う提案があった。これはありがたいと即受諾。
6日午後一で入院。入院に伴う書類提出などやや煩雑だが想定内。6人部屋とはいえ運よく窓際。清潔感溢れる小さなプライヴェートスペースだ。事細かな院内のルール説明があって、主治医執刀医とは別の眼科病棟付きの先生が今後の手術を含む治療計画を説明してくれた。主治医との連携でと強調された。
手術が7日午前の7番目と決まった。9時から3時間の間に7件の手術があるということだ。
手術自体は、あっというまだった。手術同意書に署名する前に参照した説明書は難解で、手術の所要時間は90分程度とされていたが、白内障と合わせても50分程度だった。痛みを感じることは全くなかったので拍子抜け。
経過は順調で手術から8日後の11月15日に退院にこぎつけた。
9泊10日の入院で最先端の眼科医療を体験できた。コロナ禍ですっかり主役になった「医療従事者」という言葉を実感できた。医師、看護師はみな若い。息子娘より若い人も少なくない。能力も意欲もある若者が、大量の患者について「外来、入院、手術、観察、退院、通院」というルーチンを効率的に回すということが高度にシステム化されているとでもいうべきか。おそらく膨大な数のマニュアルが堆積しているはずだ。見ていて気持ちがいい。患者の高齢化もあって、彼らの接し方は慈愛に満ちている。それがマニュアルによるものだとしてもだ。個性よりも提供する医療の水準維持が優先されてはいるものの、およそ20名の若者と親しく接することができた10日間であった。
尊敬に近い感謝あるのみ。ありがとう。
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