たとえばBWV82
「バッハ作品目録2022年版」の勢いや恐るべし。目次や索引あるいは凡例で盛り上がって、肝心の中身はということで、ずっとはまり込んでいる「Ich habe Genug」BWV82のページを覗いてみる。
こんな具合だ。BWV82が「1,2,3」という具合に細分化されている。何かと思えば独唱の声種別になっているのだ。もっとも一般的なのは無論バス用でそれがBWV82-1だ。ソプラノ用がそれに次ぐBWV82-2で、あろうことかホ短調に差し替えられている。最後のBWV82-3はメゾソプラノ用でこれはバスと同じハ短調という具合だ。
第1曲から第5曲まで冒頭の1小節だけが譜例として掲載されている。テキスト作者の名前も見えるし、その原本の出版情報も詳しい。初演は「おそらく1727年2月2日」と読める。もちろんマリア清めの祝日だ。
というわけでページをめくるとBWV82-2の譜例まである。これはソプラノ用なのでホ短調で記譜される。BWV-3のメゾソプラノ用はバスと同じハ短調というわけで省略かと納得。テキストなどはBWV82-1参照となっているのに、初演だけはBWV82-1とは違う日付になっている。1731年と1736年の2月2日だ。なんとしてもマリア清めの祝日ということだ。
BWV82-2の直下の「Besetzung」は編成だ。「S」はソプラノで、直後の「*」は独唱を表す。「VlⅠ/Ⅱ」はヴァイオリン1と2。つまりファーストヴァイオリンとセカンドヴァイオリン。「va」(ヴィオラ)の後の「BC」は紀元前ではなくて「バッソコンテヌオ」の略で「通奏低音」だ、などとのんきに読んでいてはいけない。その前の「Fl trv」が「フルートトラヴェルソ」だが、これが驚き。バス用やメゾソプラノ用では、オーボエになってるからだ。そういえば我が家のCDでもソプラノ用はオーボエの音がしないのでおかしいと思っていたが、これにて解決。
独唱がテノールのビオンディ盤もトラヴェルソだったということは、ソプラノ用の楽譜で歌っているのかと妙に納得。
この手の楽しみが延々と続いているということだ。
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