お盆のファンタジー56
ところでと、話を切り替えてきたのはリヒター先生だった。「貴殿の職場にオーケストラができたのかね?」と。
「はい」と私。「まだまだメンバーが集まりませんが」と付け加えた。「ほほう」とブラームス先生も乗り出し気味だ。「木管楽器はほぼそろいましたが、金管楽器は各1名程度で打楽器はゼロですわ」「で肝心の弦楽器はヴァイオリンは第一第二各4名程度、ヴィオラは私を入れて3、チェロ4にコントラバス2です。
「昨今のピリオド様式のバッハさんなら十分の構成じゃの」とリヒター先生。「ですがバッハさんの作品を取り上げる予定はまだありません」と私。「もっというとブラームス先生の作品も無理なんです」「なんたってホルンが足りません」「それでも名簿上のメンバーが増えてきて弦楽器の一体感はうれしい限りですわ」
「で、メンバーにはご婦人もおられるのかね?」とはブラームス先生の真顔の質問だ。「はい。もちろん」「それどころか弦楽器はほぼご婦人です」「しかもしかも私の娘らの年頃のご婦人まで少なくありません」
「それに練習の後の飲み会が必ずセットになっているのが楽しみです」と申しあげるとリヒター先生とブラームス先生が「ブラボー」と声を上げた。9割のメンバーが練習後飲み会に流れます。「てことは、つまり、あんたは毎回ご婦人に囲まれて飲んでいるんじゃな」とは察しのいいブラームス先生だ。「ばれたか」と頭をかく私。「恥ずかしながら私が最年長なんですわ」と付け加えた。
いつか演奏会をと決めています。
身内にだけ公開かもしれません。仲間にこの一体感が伝えられればと考えています。とマシンガントークが止まらぬ私を制しながら、「ほほう、それでは一度練習にお邪魔してもいいかな。アマチュアの指導には興味があるもんで」とリヒター先生が割り込んできた。
「コンサートマスターに伝えておきます」とお茶を濁しておいた。
ユーロで早々にドイツがやられたのですっかり長居になったとさっき帰っていった。
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