MVC
ティモシー・リダウト先生のヴィオラリサイタルの話。プログラムのトリが、バッハだった。無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ2番BWV1004のヴィオラ版だ。原曲ニ短調を5度下のト短調に移調したバージョン。当然ラストは例のシャコンヌだ。
みんなこれ目当てだろう。当夜、そこまでの演奏が素晴らしかったので期待は高まるばかりだったが、やはりすごかった。ヴィオラでの演奏だということをいつしか忘れて夢中。
私が生で聞いた中では過去最高のシャコンヌだった。名付けて「Most Variable Chaconne」略して「MVC」である。しかも29歳は最年少生シャコンヌでもある。ヴィオラの暖かい音色が切れ味とも共存する。楽器の取り回しや、発音の遅さなど普段取り沙汰されるヴィオラの特色なんぞわかった上で、さらにヴァイオリンにない境地を示してくれた。
なんといっても楽器の鳴りだ。売りはそこなのだろうが、頻発する重音の音程も完璧。テンポは軽快をベースに聞かせところではほのかに揺れもする。自在かつ周到のバランスが絶妙だ。
変にアンコールを弾かなかったも見識の一つと見た。
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