五楽章制
ソナタの楽章数を5つにすること。基本は3または4であるが2もときたま。
五楽章制を採用するソナタとしてはベートーヴェンの田園交響曲が有名である。第3楽章スケルツォと嵐の去った後の感謝からなるフィナーレの間に「雷雨」の様子が挿入されてそれが第4楽章と位置付けられている。ソナタ形式の頂点を極めたベートーヴェンは、その晩年において、ソナタの楽章の数を増大させる挙に出た。弦楽四重奏曲の13番14番15番においてその楽章はそれぞれ6,7,5となっている。
さらに名高いのは幻想交響曲だ。これは五楽章ある。そして極めつけマーラーの一連の五楽章制へと続く。
ブラームスのソナタは室内楽24曲、交響曲4曲、協奏曲4曲、ピアノソナタ3曲の35曲を数える。楽章の数は原則として3か4で、唯一の例外がピアノソナタ第3番で、これは五楽章である。この周辺の事情は2005年11月13日の記事「楽章の数」に詳しい。
http://brahmsop123.air-nifty.com/sonata/2005/11/post_e350.html
ピアノソナタ第3番ヘ短調op5だけが5つの楽章を持つ。1854年発表で四楽章制のピアノソナタを2曲発表した後に完成した。ブラームスの人生はあと43年続くのだが、五楽章のソナタはこれが最後になった。
ブラームスのピアノソナタ第3番の五楽章制は緩徐楽章が、2つに割れてスケルツォを包み込む形になっている。「回想」と名付けられた第4楽章は、明らかに第2楽章をトレースした旋律から始まっている。古今の五楽章制ソナタを見回してもこのパターンは大変珍しい。この作品を生み出した手ごたえから「ソナタの楽章は3個か4個」と確信したのだろうか。断っておくが、ピアノソナタ第3番はけして失敗作ではない。ピアノソナタ3つの中では、おそらく最もCDの種類が多い。なのにブラームスはこの作品によって、五楽章制を永遠に放棄したばかりか、ピアノソナタというジャンルとも決別している。
ブラームスピアノソナタ第3番の作曲後に、何かを決心したことは間違いない。
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