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2026年5月14日 (木)

時代区分

一人の作曲家の作品を完成年代順に並べて、作品上に現れた特定の形質を元に、様式の変遷を体系化するという作業が、後世の音楽学者たちによって試みられている。作品アナリーゼ系の書物には「初期の作品」「中期の特徴」「晩期の傾向」などという表現が頻繁に見られる。

この試みは一定量の作品が創作人生上に満遍なく分布し、それらが現在にも伝えられている作曲家でしか成立しない。逆に申せばこれが成立する作曲家を「大作曲家」と定義しても、よいのかもしれない。

こうした様式分析が作品理解の有力なツールになり得ること周知の通りだが、気をつけねばならないこともある。作曲家本人にはほぼ自覚が無いと言うことだ。ロベルト・シューマン邸を初めて訪ねたブラームスは、いくつかの自作を携えていた。夫妻の前で自ら演奏した作品をブラームス自らは「初期の作品」などとは思っていなかったに決まっている。シューマンに聴かせるにふさわしいと判断した作品には違いないが、それらを初期などとは微塵も思っていないだろう。

10歳前に作曲したモーツアルトが、最初の作品を書いたとき、それを「初期の作品」だなどと思っていない。

それらの概念は、作曲家が亡くなってもうこれ以上作品が出て来ない状態になった後生まれるものだ。唯一「晩期」だけは死が近いことを自覚した場合に、自ら意識することはあると思われるが、初期や中期は無理だ。「そろそろオレも中期か」などと思いながら作曲することはあるまい。あくまでも後からつけら理屈だ。

屁理屈をこねるには便利な概念だが、肝に銘じていようと思う。

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