ハルツ
アルトラプソディop53のテキストがゲーテの「冬のハルツ紀行」だということは割と知られている。ゲーテは「ファウスト」の執筆のためにこの地を訪れていた。ハルツ地方は旧東西ドイツの国境を形成する山地だ。最高峰ブロッケン山1142mはワルプルギスの舞台である。つまりこのあたり一帯は魔女信仰が存在していたということだ。
804年フランク王国のカール大帝は30年にも達する征服戦の末、ザクセン族を帰順させた。これによりザクセン族はキリスト教化されて行く。つまりザクセン族は古来の信仰を捨てさせられたのだ。アレクサンダー大王の末裔を自称するザクセン族だが、ハルツ山地の甘い水が湧く泉から生まれたという伝承も残されている。ハルツはザクセン族が古来信じてきた宗教にとっての聖地だったのだ。キリスト教化がある程度進んでも、昔の信仰を捨てられない人々が、密かに集まって宗教的儀式を行っていたのがブロッケン山だった。キリスト教側から見ればそうした集まりは異端だ。邪教である。
それが魔女信仰の由来になっていったと解されている。ワルプルギスというのは、ザクセン族のキリスト教化を勧めるためにブリタニアから呼び寄せられた聖女だった。異端信仰を捨てさせるために来ている聖女だ。名目上春の訪れを祝う祭りでありながら、聖女ワルプルギスへのささやかな抵抗であった。







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